日本の性教育は遅れてるって言うけど、
世界ではどんな性教育が行われてるの?
性教育には国際的な指針があります。
今日は、性教育の国際的な指針や、他の国の教育機関での性教育についてお伝えします。
性教育の国際的な指針「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」
性教育の国際的な指針を、国際セクシュアリティ教育ガイダンス(ITSE: International Technical Guide on Sexity Education)と言います。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスとは?
ユネスコやユニセフなど国連機関が協力して2009年に発表した、子ども達の性や体、人間関係について学ぶための国際的なガイドライン。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスの目的
人権を基盤に、性についてのポジティブなイメージを育てて欲しいという考えに基づき、以下のことを目的としています。
- 質の高い包括的性教育を提唱すること
- 健康と福祉を促進すること
- 人権とジェンダー平等を尊重する教育を推進すること
- 子どもや若者が健康で安全で生産的な生活を送ることができるようにすること
- 性についてのポジティブなイメージを育てること
8つのキーコンセプト
国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、質の高い包括的性教育のために、8つのキーコンセプトが示されています。
1.関係性
2.価値観・人権・文化・セクシュアリティ
3.ジェンダーの理解
4.暴力と安全確保
5.健康と幸福のためのスキル
6.人間のからだと発達
7.セクシュアリティと性的行動
8.性と生殖に関する健康
年齢別の学習目標
国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、8つのキーコンセプトについて、年齢で分けたグループごとに学習目標が設定されています。
日本の性教育ではなかなか進んで伝えられていない、性と生殖に関して、国際セクシュアリティ教育ガイダンスではどのように示されているのか、主な内容を以下にまとめます。
5〜8歳
・内性器と外性器の基本的な機能を理解する。
・妊娠が始まるには、精子と卵子の両方が結合し、子宮に着床する必要があることを理解する。
・妊娠中に女性のからだがたどる変化について理解する。
・妊娠と生殖は自然な生物学的プロセスであり、いつ妊娠するかは計画できることを理解する。
9〜12歳
・望まない性的な扱われ方とは何かについて理解する。
・生殖を引き起こすからだの重要な機能(例:月経周期、精子の畜生、精液の射精)を理解する。
・ペニスが膣内に射精する性交の結果で、妊娠が起こりうることを再認識する。
・意図しない妊娠のリスクを減らすために、男性用と女性用のコンドーム両方の正しい使い方の手順を理解する。
・HIVを含む、一般的な性感染症の検査と治療について知る。
12〜15歳
・性的同意を伝えること、受け取ることの重要性を認識する。
・生殖機能と性的感情には違いがあることを理解する。
・避妊法によって、成功率、効能、利点、副作用が異なることを知る。
・性の指向やジェンダー認識の多様性を理解する。
15〜18歳
・同意に基づいた性的行動は、健康的な性的関係の重要な要素であることを認識する。
・不妊に対処するための選択肢があることを認識する。
・コンドームや緊急避妊薬を含め、避妊具を正しく使用することの重要性を認識する。
・性的関係における責任と安全について深く学ぶ。
上記は学習目標の一部であり、他にも様々な目標が掲げられています。
フィンランドやオランダでは4歳からの性教育を義務教育化しています。
世界には0歳から性教育を始めることが一般的と考えている国もたくさんあるのです。
日本で昔から言われる「寝た子を起こすな」とは?
「寝た子を起こすな」という表現は、日本の性教育に関する議論でよく使われる言葉です。
どういう意味?
「寝た子を起こすな」とは、性に関する知識を持たない子ども達(寝た子)に、不必要に性的知識や避妊、中絶などを教えると好奇心や興味本位で性行動を誘発してしまうから、不必要に教える必要はないという考え方です。
しかし、現代の子どもや若者は、メディアやインターネットで真偽のわからない様々な性的な情報に触れています。つまり、子どもは性に関する知識を持たない子ども(寝た子)ではないのです。
SNSをきっかけとした児童ポルノ被害児童は年々増加傾向です。
誤った情報によって、子どもや若者の望まない妊娠による若年出産や中絶・性感染症の増加など深刻な問題が生じています。
その要因には避妊や性感染症についての知識不足によるものが多く、しっかりと正しい知識を学び、性の知識を深め、体や命の大切さをよく理解することが大切であると考えられます。
性教育は本当に性行動を誘発するの?
性教育への反対理由で多いのが、「性的な知識や避妊、中絶などを教えると、好奇心や興味本位で性行動を誘発してしまう」という考えです。
性教育の実施は、本当に性行動を誘発するのでしょうか?
秋田県では、初交の低年齢化や人工妊娠中絶率の上昇に歯止めがかからないという状況があり、2000年より県内で医師による性教育講座を実施しています。
その結果、性教育講座を始める前は全国の1.5倍まであった秋田県の10代人工妊娠中絶は、医師による性教育講座を含めた事業の結果、2017年には全国平均の1/2以下にまで低下し、中学生を対象としたアンケートでは、性教育講座の前後で「性的接触に対する考え方」でより慎重になる変化が見られました。
正しい性教育は、初めての性交体験を遅らせる効果があります。
また、性教育が性行動を増加させるという根拠は全く見られません。
これらの結果、性教育の反対意見として聞かれる「寝た子を起こすな」という考え方は適切ではないと言えます。
まとめ
性教育の国際的な指針の「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の一部分について触れました。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスの目的である包括的性教育は、単に性に関することを扱うだけでなく、人権を基盤とした性に関する幅広い知識とスキルを身に着け、幸せに生きていくための教育です。
日本でも包括的性教育の重要性が認識されつつありますが、その実施にはまだまだ課題が残っています。
子ども達が、自分らしく幸せな人生を生きていくために、身近な大人から適切な性の知識を伝えることが大切です。
▼参考資料
SEXOLOGY(性を学ぶセクソロジー)国際セクシュアリティ教育ガイダンス